問いを立てる支援者になる3つの方法・― ビジョントレーニングに向き合う前に、大切にしたいアセスメントのまなざし
- ジョイビジョン奈良.OptMatsumoto(1級.眼鏡作製技能士)

- 10月18日
- 読了時間: 3分

ビジョントレーニングの選択肢が“感覚”で決まる現場
──本当にそれ、子どもにとってベスト?
「なんとなくやった方がよさそう」
「以前に〇〇で見てもらってるし」
「とりあえず、ビジョントレーニングって言われたんで」
…そんな“なんとなく”で組まれる支援計画。
大人の都合と雰囲気で、子どもの未来が振り回されてる現実。
「効果が上がらないので、もっとちゃんと見てくれるとこ、ないですかね…」
そう言われたときには、すでに子どもは“見え方の困りごと”に慣れてしまってる。
せっかくのタイミングを逃してしまってる・・・
近年、視覚や発達に関する支援現場で「ビジョントレーニング」や「視知覚トレーニング」という言葉が広がりを見せています。
確かに、支援の一環としてのアプローチが広がること自体は喜ばしいことかもしれません。
しかしその一方で、“なぜこの子にこの支援なのか”という問いが立てられないまま、支援がスタートしてしまうケースも少なくありません。
本当に必要なプロセスが省かれてしまうことで、本来見つけられるはずだった「個の特性」や「意味のある支援機会」が、見過ごされてしまうことも・・・
今回は、「問いを立てる支援者」になるための視点として、以下の3つを取り上げます。
1. 「支援の前に、個の風景を見る」
ビジョントレーニングは手段であり目的ではありません。
その前提を忘れると、「○○ができないから△△をやる」という一足飛びの結論になりがちです。
大切なのは、“どんな見え方をしているのか” “どんな状況で困っているのか”を、感覚や環境、生活文脈も含めて丁寧に見つめる視点です。
たとえば、板書の見えにくさがある子どもに対して、「目を鍛えよう」ではなく、
そのとき、どんな気持ちだった?
どこを見ていた?
教室のどこが見づらかった?
といった問いから始めることで、まったく違うアプローチが見えてきます。
2. 「“気になる”の奥にある“意味”を探る」
見え方の困りごとは、本人にとっては“気づかれていないまま、我慢しているストレス”であることも多いものです。
気になる行動や姿勢の裏には、「そうすることでなんとか適応しようとしている」努力が隠れています。
そこに気づけるかどうかは、“問いの精度”にかかっています。
安易に「努力不足」「トレーニング不足」と決めつける前に、
この子は、どんな戦略で見ようとしているのか?
その方法を選んだ背景には、どんな感覚があるのか?
を想像してみることが大切です。
3. 「“本人の語り”を手がかりにする」
支援者の視点だけで完結させず、本人の言葉、動き、つぶやきを手がかりにすること。
たとえば「黒板がまぶしくて見たくない」「字がにじんで見える」「色がイヤ」といった主観的な訴え。これらは、アセスメントのヒントであり、“問いを立てるための素材”です。
「そんな感覚あるんやな」「じゃあ、どうしたらちょっとでも見やすくなるかな?」と、一緒に“問いをつくる”関係性こそが、支援の本質かもしれません。
◆ まとめ:
ビジョントレーニングをする・しないはゴールではなく、「この子にとって必要なことを、なぜ・どのように支援するのか」を考える入り口。
そのためには、“答え”を出す前に、“問い”を立てる力が必要です。
支援者に求められているのは、
✔ すぐに方法論へ走らないこと
✔ 感覚の語りに耳を傾けること
✔ 一緒に考え、一緒に探ること
ビジョントレーニングが悪いのではなく、“問いなき支援”が、意味を持たなくなるリスクを孕んでいるということ。
だからこそ、今、もう一度立ち返ってみたいのです。
「問いを立てる支援者であるために、何ができるか」を。


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