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斜位・斜視

物が二重に見える・時々片目が斜視になる・遠近の視線移動が困難(時間がかかる等)

斜位・斜視を検査・補正する事について

斜視・斜視は両眼視機能を熟知したテスターが適切な検査方法で矯正することで大きな効果を発揮します。

最近では、斜位・斜視について学術的におかしい用語を用いたり、間違った知識を喧伝するメガネ店も急増しており、その測定方法や補正方法について大きな矛盾を感じることが増えてきました。

ここでは、斜位・斜視で困られている方にとって、間違った情報を選択しないための基準・検査・補正について述べたいと思います。

両眼視の基本(binocular vision)

私たちの眼は前方に向かって2個あり、平均62mmの瞳孔間距離をもって左右に備わっています。

この両眼で見る範囲は大部分で重なっており、その左右眼に映る映像は若干異なっています。

これを視差と言い、この視差をひとつにまとめ、外界の物体の存在・距離・遠近感・立体感を感じる能力を「両眼視機能」と言います。

この両眼視機能には3つの段階があり、3つの機能が段階的に機能していなければ、立体視がおこりません。

両眼視機能の段階

1-両眼同時視

両眼ともに視力があり、両眼を同時に使い、両眼の網膜に同時に映し脳で同時に感じる能力。

この機能が無い場合、1眼で見ているときに他眼は何も見てないのと同じ状態になります。

2-融像

両眼の網膜でとらえた像を一つにまとめあげる機能。

1の同時視があっても、融像が出来ないと複視が起きます(2重に見える)

融像を維持するために行われる眼球運動を融像運動または運動性融像といい、感覚的な融像を感覚性融像といいます。

3-深径覚・立体視

融像するとき、左右の眼の網膜に映る視差を処理して、両眼の像を融像するときに生じる立体的な感覚。

同時視・融像の機能の頂点にあり、遠近感・立体感が成り立つ高度な機能を言います。

両眼視の条件

両眼視に必要な条件として、下記のことがあげられます。

1-両眼視力に差が無いこと

片眼の視力が無かったり、それに近い場合は両眼視ができません。

両眼の視力が0.4~0.5以上あり、両眼の視力に大きな差がないことが条件になります。

​2-眼球運動に共働性があること

目標をみているとき、両眼の視線が対象物に向いていることが条件になります。

斜視などの場合、対象を1眼でしか見ておらず、両眼視を行うことが困難になります。

斜視の発生時期は大部分が小児期であって、小児期の斜視頻度は2~4%にもなります。

大人になってからでは両眼視を獲得するのが困難なので、早いうちから発見・対応することが重要になります。

3-網膜像の大きさや形がほぼ同じであること

左右での視力や度数の差が大きすぎる場合、両眼視を行うことが困難になります。

また、不同視で左右の矯正視力が良好であっても、網膜不等像症が要因で両眼視を行うことが困難な場合があります。


以上の事より、両眼視を達成するには上記の点が欠けている場合、両眼視自体が困難である場合もあります。

また、先天的に斜視などの眼位異常がある場合、発達過程で獲得する筈の両眼視が無い場合もあり、そのようなケースにおいて両眼視を獲得するためのメガネ補正は非常に難しい状態となります。

先天的に斜視があって発達過程でも両眼視できていた期間が非常に少ない場合の両眼視獲得に関して、100%無理ということではないものの、両眼視を喚起するためには斜視眼の抑制除去に連なって両眼同時視を喚起する必要があり、両眼同時視が達成された場合には融像を喚起することになります。


両眼視機能の異常によって物が二重に見える


複視とは、固視している1つの物体が2つに離れて見える状態のことを言います。

脳梗塞・脳神経麻痺などの重大な疾患によって複視が起こる事もある為、兆候なく現れる突然の複視に関してのファーストオピニオンは医療機関です。

また、脳神経(第3第4第6)等の麻痺によって起こる斜視などもあるので注意が必要です。

当店で扱う複視の問題は両眼視機能の異常が由来によるものです。

脳梗塞等の治療後に複視が出たり、複視が残存するケースに関しても当店でのアプローチが有効です。

複視とは、基本的に両眼同時視がある状態ですので、あとは融像を可能にするための対策を打つだけです(プリズム補正・ビジョントレーニング)

逆に複視を嫌って片眼抑制状態になると、抑制除去からのアプローチになるため、ケースによっては効果が即時的でなく時間がかかる事があります。


斜視と斜位の違い、そして斜視・斜位に対する方策


斜視​


目標を注視するとき、1眼は注視するが他眼は異なった方向に偏位し、目標に両眼の視線が集まらないものを斜視と言います。斜視は両眼の眼球運動に共働性がある斜視と、眼筋麻痺による麻痺性の斜視とに分けられ、一般に斜視と言えば前者の共働性斜視の事を言います。麻痺性斜視は眼筋麻痺と言います。


斜視の方向


斜視は左の写真のようにズレの方向によって、内斜視、外斜視、上斜視(下斜視)、そして回旋斜視と分けられます。

斜視には、常に同一眼が斜視になっている状態(片眼斜視)、両眼が斜視と固視を交代で行う交代性斜視があります。

また、常に斜視になっている状態を恒常性斜視といい、斜視の時と斜視でない時があるものを間歇性斜視と言います。​

原因は様々ですが、眼筋そのものの異常や付着異常、輻輳・開散のアンバランス、遠視・両眼視の異常、視力障害等のいろいろな要因があり、原因は単一ではありません。

方策-斜視が認められた場合


斜視の量によっては外科的手術が有効です。手術後に残存する斜視をメガネ補正し、更にビジョントレーニングを行うことで両眼視機能の回復を目指します。

両眼視を経験的に獲得したことがなかったり、その期間が短かったり、網膜異常対応などがある場合、手術をしても両眼視機能が回復しない場合もあります。



斜位

両眼視機能がある人が目標を注視するとき、両眼はほぼ並行して目標に向かっています。このとき、1眼を遮蔽すると両眼視が崩れ、他眼は目標を向いているが遮蔽された眼は目標が無くなるので安静位を向いてしまいます。このとき、遮蔽している眼が偏位する状態を斜位と言います。

その偏位の状態によって、左の画像のように内斜位・外斜位・上斜位(下斜位)と分けられます。

斜位は両眼視機能があるので、遮蔽を解除すると複視が起こりますが、複視を避けるために偏位してた眼の注視線は目標に向かい、他眼の注視線と重なる位置まで戻ります。

この働きを矯正運動と言い、複視を避けるための両眼視機能を融像といいます。

この両眼視機能が何らかの理由で保てなくなった時に斜視へとなります。

方策-斜位が認められた場合


斜位自体は元々の屈折異常(近視・遠視)によって傾向的に多くの人が持っているものです。

遠視眼であれば調節の強さによって内斜位傾向になりやすく、近視眼では調節の弱さと輻輳緊張の弱さによって外斜位傾向になりやすくなります。

一般的に斜位自体が問題になってくるのは、斜位量とその斜位量を補う自助資源とのバランスが悪い場合です。

例えば、斜位量そのものは量的に少なくても、斜位を補う力が弱い場合はメガネやビジョントレーニングで補う方策が有効です。

反対に斜位量が量的に大きくても、それを補って余りある力を持っている場合はメガネ補正(プリズム補正)が効果的でなく仇になる場合もあります。

この判断は多層的・重層的検査を行うことにより判断され、眼精疲労の除去や立体視・深径覚の改善が確認されることも補正の際しては重要な要素になります。

ここでいう立体視の確認とは、ステレオフライやステレオバタフライのような低次(立体視ターゲットが分かりやすい)な立体視ではなく、精密立体視を用いて判断します。

簡易的な立体視検査で「蝶々の羽が浮かんで見えるか?」とステレオバタフライテストがありますが、これがクリアできるからといって高次な立体視があるとは判断できません。


斜視・斜位に対する方策

精密な屈折検査・両眼視機能検査とバックボーンにある知識・技術の信頼性

両眼視機能検査には様々な方法があります。

当店ではドイツ式両眼視機能検査米国21項目検査を主訴や状態に応じて併用及び各検査での限界を補うためにクロスバッテリーしております。

これらの知識・技術は臨床経験も豊富であり、技術的バックボーンは様々な体系的学習を経て信頼性と精密性は担保されております。

積み重なったスキルは熟達されており、どのような状態像においても非常にスムーズ且つ当たり前のように方策を出すことが可能です。

これをスキルの熟達化と言います。

近年、今迄のやり方で上手くいかなくなったメガネ店が、体系的学習や十分な経験をを積まないままに両眼視機能うんぬんを喧伝するような困った時代になりました。

体系的学習を行わず、付け焼き刃で検両眼視機能の検査が行なわれるのは、眼に困り感を持つ方にとって大きな不幸であると言えます。

また、視機能の問題を主訴として眼科に行ったとしても、外科的処置や薬が必要のない状態であれば眼科的には「問題が無い」という判断を下されてしまいます。

特に斜位に関しては明確なアウトプットを示されないままに、経過観察を言い渡される方が多く、これによって途方に暮れている方を多く経験してきました。

眼科的に問題が無いという判断は、あくまで薬や外科的な治療を必要としないというだけの状態であり、無駄に経過観察を強いられるのは対象者の生活の質を下げるだけの結果になりがちです。

正しい知識を持って、より良い選択が出来るように「情報の質」に眼を向けて頂ければ幸いです。

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